作業療法士の復職支援とは?休職中からできることを解説

「復職支援って聞くけど、作業療法士は実際に何をしてくれるんだろう…?」休職中にそんなふうに気になっている方も多いのではないでしょうか?
体調は少しずつ戻ってきたのに、仕事のことを考えると胸がざわついたり「このまま戻って大丈夫なのかな」と、復職の日が近づくほど不安が大きくなる方もいらっしゃると思います。
今日は作業療法士の視点から、体調が戻っても復職が不安になる理由と作業療法士の復職支援でできることを一緒に見ていけたらと思います。
復職の不安は「体調」と「働くこと」の間にある
休職中の方と関わる中で「調子は良くなったのに、なぜか戻るのが怖い」という声をよく聞きます。
確かに「家で過ごす一日」と「職場で働く一日」は使う体力も頭の使い方もまったく違いますよね。それ故、体調が戻ることと働ける状態に戻ることのあいだには、少し違った意味になるのだと思います。
復職が怖いのは、回復が足りないからではなく、その意味の距離をまだ埋めている途中にいるからです。
だからこそ、その距離が何でできているのかを一度分けて見ておきたいところです。
体調が戻っても復職が不安になる3つの原因
1. 生活リズムが「働く一日」にまだ合っていない
休職中は、起きる時間や食事の時間がその日の体調で決まりやすくなります。
ゆっくり休む時期にはそれでいいのですが、復職が近づくと「朝決まった時間に起きて、日中ずっと活動する」ことが高いハードルに感じられるのかもしれません。
朝起きられるかどうかは、それまでの生活の積み重ねで決まってくるものです。実際に休職中の方からも「平日の朝がいちばんつらい」という声をよく聞きます。
2. 仕事に近いことを、まだ試せていない
家で安定して過ごせるようになっても
「パソコンに向かって集中する」
「人と話しながら作業する」
といった仕事に近いことは、休職中にはなかなか試す機会がありませんよね。試したことがないものほど、頭の中で不安が大きくなっていきやすい。
仕事のことを考えるだけで動悸がするのも、まだ「やってみた結果どうなったか」という手応えがないことだと思います。
3. 自分の疲れ方や調整のしかたを言語化できていない
自分は「どんなときに疲れやすくて、疲れたときにどうすれば持ち直せるのか…」それが自分の中で理解できていないと、職場に何を伝えればいいのかも分からなくなってしまいます。
「また無理をしてしまうのでは」という不安は、自分の扱い方がまだ手元にない不安とも言えるのではないでしょうか?
ただ自分の疲れ方が分かってくると「戻れるかどうか」ではなく「どのようにして戻るか」を考えられるようになっていきます。
ここで作業療法士の復職支援でできること
作業療法の「作業」というのは、仕事だけでなく「起きる、食べる、出かける、人と話す」といった、その人にとって意味のある生活の行為すべての活動を指します。作業療法士は、その生活の行為を手がかりに、心と体の回復を支える専門職です。
復職支援では、例えば次のようなことを一緒に行います。
「今の一日の過ごし方」と「働く一日の過ごし方」とのギャップを一緒に見立てること
仕事に近い作業を、負担の小さいものから段階的に試していくこと
メンタル不調のサインや調整のしかたを整理して、職場に伝えやすい形にすること
こうした「仕事に向けた練習」を回復の中に組み込んでいきます。
実際に2026年、BMC Psychologyという心理学の専門誌に、スウェーデンの研究チームによる研究が掲載されました。
うつや不安などで病気休業している人を対象に、治療の中に仕事への戻り方を組み込んだ認知行動療法の効果を、24の研究(参加者3,279名)からまとめて分析したもので、分析の結果は次のようなものでした。
治療を受けた人の症状が大きく改善し、その改善が追跡調査の時点でも保たれていたこと
治療の終了時には56%、追跡調査の時点では87%の人が仕事に戻っていたこと
比較対象の人たちと比べて、部分的ではなく完全な復職に至りやすかったこと
ただ研究ごとに復職の測り方が差があって、結果の比べ方にはまだ課題があると研究チーム自身も述べています。それでも症状の治療と仕事に戻る準備を別々にせず、一緒に進めることに意味があると見えてきます。
(復職までの全体の流れについては【復職が怖い、復職面談も不安…|段階的な回復でたどる復帰への5つのステップ】の記事でもまとめています)
また厚生労働省の「職場復帰支援の手引き」でも、正式な復帰の前に、勤務時間と同じ時間帯にデイケアなどで軽作業をしたり、図書館で過ごしたりする「模擬出勤」が紹介されています。
復職の準備は、体調が整ってから始めるものではなく、回復と並んで少しずつ進めていけるものなのだと思います。
こうした復職に向けた準備は、作業療法士に相談しながら進めることもできます。Mental Manageのサービスについてはこちら
休職中の今からできる3つのこと
1. 出勤する日の1日の流れを書き出してみる
まずはじめに
何時に起きて
何時に家を出て
昼食はいつ取るのか
働いていたころの一日を時間ごとに書き出してみましょう。そのうえで今の一日と並べてみると、どこにギャップがあるのかが見えてきます。
全部を一度に合わせる必要はなく、まずは起きる時間だけ近づけてみるのも一つです。
(生活リズムの整え方は【復職前に整えたい「生活リズム」|出勤を想定した一日の組み立て方】の記事も参考にしてみてください)
2. 仕事に近い作業を「小さく」試してみる
例えば、図書館やカフェで30分だけ本を読む、パソコンで短い文章をまとめてみる…そのくらいの小さな作業から始めてみましょう。その時に
どのくらいの時間で集中が切れたか?
終わったあとにどのくらい疲れが残ったか?
次の日の体調に影響があったか?
このように振り返ってみてください。
「やってみたらこうだった」が一つずつ増えていくと、頭の中だけで大きくなっていた不安が、少しずつ手のひらサイズになっていくと思います。
3. 疲れたときのサインと対処を1枚にまとめる
試してみた中で気づいた疲れのサインと、そのときに精神的に楽になったことを書き留めておきましょう。
例えば「午後になると目の奥が重くなる → 10分だけ席を離れると持ち直す」といった形でしょうか。
これがあると、復職の面談で上司や産業医に「こういう配慮があると助かります」と伝えやすくなります。
(まとめ方は【休職中に「自分の取扱説明書」を作ってみる|ストレスサインと対処法を言語化するワーク】の記事でも紹介しています)
まとめ|作業療法士の復職支援は「回復」と「働くこと」をつなぐもの
ここまでの内容を、もう一度並べてみます。
体調が戻っても復職が不安になるのは、家で過ごす一日と働く一日のあいだに距離があるから
その距離は、生活リズム、仕事に近い作業の経験、自分の疲れ方の言葉の3つでできていること
回復と並んで仕事に向けた準備を少しずつ進めることに、研究の裏づけがあること
一方で、どんな準備がどのくらい合うかは一人ひとりの体調や職場によって違っているので、主治医の意見を土台に考えていくことが大切です。
それでも「戻るのが怖い」と感じながら、ここまで回復してきたこと自体が大きな一歩であり、その怖さは一人で抱えずに、誰かと一緒に小さくしていけるものなのだと思っています。
よければ参考にしてみてくださいね。
参考文献
Finnes, A., Johansson, M., Bernhardtz, R., & Öst, L. G. (2026). Work-focused cognitive behavioural therapy for common mental disorders: a systematic review and meta-analysis. BMC Psychology, 14(1), 1374. https://doi.org/10.1186/s40359-026-05648-2
厚生労働省・独立行政法人労働者健康安全機構. 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き(改訂版). https://www.mhlw.go.jp/content/000561013.pdf
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