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2026.07.09

休職中に「自分の取扱説明書」を作ってみる|ストレスサインと対処法を言語化するワーク

休職に入ってしばらく経った今、「休んでいるのに、なんだか落ち着かない…」そんなふうに感じていませんか?

最初のうちは「とにかく休もう」と思えていたのに、少し元気が出てくると今度は「このままでいいのかな…」という不安が顔を出してくる人も多い。

まず最初にお伝えしたいのは「何もできていない」と感じているのは、実はとても大切な回復のプロセスの途中にいるということ。

今日は、休職中の時間を「自分を責める時間」ではなく「自分を知る時間」に変えていくためのワークをご紹介したいと思います。

休職を復職を繰り返してしまう最大の理由

休職を繰り返してしまう方のお話を伺っていると、一つだけ共通する部分があります。それは「調子が悪くなる前の"サイン"に、自分自身が気づけていない」ということ。

体調も気分もある日突然どん底に落ちるわけではなく、多くの場合、その手前に小さな予兆があります。

例えば、眠りが浅くなる、朝の支度が億劫になる、些細なことにイライラする、既読を返すのが面倒になる…こうしたストレスサインは、実はご本人にとっては「いつもの延長線上」に見えてしまい、見過ごされやすいものです。

つまり本当の問題は、頑張りすぎたことそのものよりも「頑張りすぎているストレスサインを、自分で把握できていなかったこと」にあるのかもしれません。

だからこそ、休職期間は休むだけでなく「自分のストレスサインを言語化する」貴重な時間にもなり得るのです。

自分のストレスサインに気づけなくなる3つの原因

不調のサインを「気合いで乗り越えるもの」と捉えてしまう

真面目で責任感の強い方ほど「これくらいで弱音を吐いてはいけない」「みんな我慢している」と考えてしまう傾向があるかもしれません。

その結果、体や心が発している小さな警告を、意志の力でねじ伏せようとしてしまいます。

不調のサインは「弱さの証拠」ではなく「体からの正当なメッセージ」として受け止める必要があります。

自分の不調が漠然としており言葉にできていない

「なんとなくしんどい、よくわからないけど嫌な感じ…」このように、感覚は確かにあるのに、それを具体的な言葉に落とし込めていないケースも多く見られます。

言葉にならない不調は、自分自身でも対処が難しく、ただ蓄積していってしまう方向にいってしまいます。

自分と向き合う時間そのものが失われている

仕事に追われていると、自分の内側に意識を向ける余裕自体がなくなってしまいます。なので休職という時間は「自分と向き合う時間」を取り戻す機会でもあるのです。

しかしその使い方がわからず、ただ不安な気持ちで過ごしてしまう方も少なくありません。

言葉にすることへの科学的な意味

「言語化なんて、気休めなのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、これには一定の研究的な裏付けがあります。

UCLAのマシュー・リーバーマン氏らが2007年に発表した研究では、ネガティブな感情を表す画像を見せた際に、その感情に言葉のラベルをつける(affect labeling)ことで、恐怖や不安に関わる脳の部位である扁桃体の活動が鎮まることが示されています。

感情を「なんとなく嫌な感じ」のままにせず「不安」「苛立ち」「疲労」といった言葉に置き換えるだけで、脳の捉え方が変わることが示唆されています。

また、うつ病の再発予防に関する臨床心理学の分野でも、自分の不調のサインを早期に把握する「セルフモニタリング」は再発防止の重要な要素のひとつとして位置づけられています。

日本国内のリワーク(復職支援)に関する研究でも、プログラムを利用せずに復職した方は、利用した方に比べて再休職の割合がおよそ約2.3倍にのぼるというデータもあり、こうした支援の中では「自分の状態を客観的に把握すること」が重視されています。

つまり「自分のサインを言葉にする」という一見地味な作業は、科学的にも意味のある回復のための立派なプロセスなのです。

「自分の取扱説明書」を作ってみること

ここからは、実際に手を動かしてみるワークのご紹介です。

難しく考えず、完璧を目指さなくて大丈夫なので、ノートやスマホのメモに思いつくままに書き出してみてください。

ステップ1:調子を崩す前の「初期サイン」を書き出す

過去を振り返って「あのとき、実はこんな変化があったな」と思うものを挙げてみましょう。例えば

  • 眠りが浅くなる、朝起きるのがつらくなる

  • ご飯は美味しく感じない、または食べ過ぎてしまう

  • 誰かに連絡を返すのが面倒に感じる

  • 些細なことでイライラしてくる

  • 「自分はダメだ」という考えが増える

このように自分の調子が悪くなり始めるサインを一つずつ挙げてみましょう。

ステップ2:それぞれのサインに「効いた対処法」を書く

次にそれぞれのサインに対して「これをすると少し楽になった」という対処法を思い出せる範囲で書き添えてみましょう。例えば

些細なことでイライラしてくる▶︎深呼吸してみる

誰かに連絡を返すのが面倒に感じる▶︎一度スマホから離れて散歩する

「自分はダメだ」という考えが増える▶︎誰かに"しんどい"とだけ伝える

このように小さなことで構いませんので、自分だけの対処方法を記載しておきましょう。

ステップ3:信頼できる人に一緒に見てもらう

作った取扱説明書は、家族やパートナー、あるいは復職時に上司や産業医に見せることで「こういう状態になったら、こう対応してほしい」という共通言語になります。

もちろん誰にも見せず、自分のためだけに持っておくのでも構いません。

この「取扱説明書」は自分を縛るルールではなく、これからのあなたを助けるための道具です。

まとめ:焦らず自分のペースで言葉にすること

休職中は、「早く元の自分に戻らなければ」というプレッシャーを感じやすい時期かもしれません。

でも本当に大切なのは「早く戻ること」よりも、「同じようにまた再発しないこと」です。

もし可能であれば、その3つのサインの横に、「そのとき、何をしたら少しでも楽になったか」を思い出しながら添えてみてください。

最初は言葉にならなくても大丈夫。まずは書き出してみることそのものに意味があり、それだけで自分だけの取扱説明書の最初のページが出来上がります。

一気に完成させる必要はありませんので、今日は3つ、明日また思い出したことをひとつ、少しずつ書き足していく…そんなペースで、よければ参考にしてみてくださいね。

もし一人で言葉にしていくのが難しいと感じたり、専門家と一緒にご自身のサインを整理したいと感じたりした場合は、無料相談もご利用いただけます。

あなたのペースに寄り添いながら、一緒に考えていけたらと思っています。

▶︎無料相談はこちら

参考文献

Lieberman MD, Eisenberger NI, Crockett MJ, Tom SM, Pfeifer JH, Way BM. Putting Feelings Into Words: Affect Labeling Disrupts Amygdala Activity in Response to Affective Stimuli. Psychological Science. 2007;18(5):421-428. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2007.01916.x

大木洋子, 五十嵐良雄. リワークプログラム利用者の復職後の就労継続性に関する効果研究. 産業精神保健. 2012;20(4):335-345. https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201302250467388895

五十嵐良雄. リワークプログラム利用者の就労予後に関する研究(厚生労働科学研究「精神障害者の就労移行を促進するための研究」分担研究報告書). 2019. https://utsu-rework.org/cms/wp-content/themes/the-thor-child/img/pdf/2019_006.pdf

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