復職はやっぱり無理…?復職か退職か迷うときの判断の軸について解説

「やっぱり復職は無理かもしれない。いっそ辞めたほうがいい…?」休職中にそのように考えて、眠れなくなっている方も多いのではないでしょうか?
戻れる気もしないし、かといって辞めたあとのことを考えるとそれも怖い…どちらにも決めきれないまま、頭の中で同じ問いが何度も回り続けている、という感じではないかと思います。
今日は作業療法士の視点から、復職か退職かで迷ってしまう理由と、決める前に整えておきたい判断の軸を一緒に見ていけたらと思います。
「復職か退職か」で迷うのは、先のことを真剣に考えているから
休職中の方と関わる中で「戻っても迷惑をかけるだけなら、辞めたほうがいいのかもしれない」という声をよく聞きます。
ここで迷ってしまうのは、職場のことも自分のこれからのことも、どちらも大事に考えているからなのだと思います。
迷っている自分は、優柔不断なのではなく、ちゃんと先を見ようとしています。
ただ休職中は、その「先を見る力」そのものが、体調の影響を受けやすい時期でもあります。だからこそ答えを急ぐ前に、その迷いの本質を一度紐解いておく必要があります。
「復職はやっぱり無理」と感じてしまう3つの原因
1. 体調が戻りきる前は、先のことが暗く見えやすい
厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」で紹介されている事例では、うつ病で療養を始めた方について、産業医が上司に次のように伝えています。
「うつ病で退職したい気持ちになることもあるので、療養中に退職届が出ても引き止めて、産業医に連絡してほしい。」
この方は主治医からも、療養の初めのころは「仕事のことはまだ考えるタイミングではない。」と言われていました。
このように「辞めたい」という気持ちの一部は、メンタル不調が作り上げているものかもしれません。
その気持ちが間違っているという意味ではなく、今の体調で見えている景色だけで、大きなことを決めなくてもいいということですね。
なのでまずは体調を整えることを優先しておきたいところです。
2. 「元どおりの自分」で戻ることを前提にしている
「前と同じ量の仕事をこなせるようにならないと…」そんなふうに、休職前の自分を基準にして考えてしまう方も多いと思います。
でもその基準で考えると、今の自分はどうしても足りなく見えてしまいます。
復職は元どおりの自分で戻ることではなく、少しずつ働く量を増やしていく過程なのだと思います。
3. 「戻る」か「辞める」かの二択だけで考えている
同じ「こころの耳」の事例では、この方は元の課長職にそのまま戻ったのではなく、直接の部下を持たない役割で復職し、最初の1か月は6時間勤務から始めて、復職から8か月ほどかけて元の課長職に戻っています。
部署や役割を変える
勤務時間を短くして始める
仕事の中身を調整する…
このように「復職」の中にもいくつもの形があり、二択だけで考えていると、より迷いやすくなる可能性があります。
復職か退職かは「選べる状態」になってから決める
では、職場を離れて新しい場所で働くという道は、どう考えればいいのでしょうか。
2026年、Disability and Rehabilitationというリハビリテーションの専門誌に、オランダの研究チームによる研究が掲載されました。
元の仕事に戻ることが難しくなった長期休職中の人が、新しい雇用主のもとで復職していく過程について、1,584件の文献から条件を満たした28件をまとめたレビュー研究です。
そして研究チームの報告は、次のようなものでした。
新しい職場での復職は、元の職場への復職よりも時間がかかりやすいこと
その道を選ぶには「ひとつの道を手放して別の道を開く」と受け止める過程があること
「やれそう」という感覚、気持ちと実際の準備、スキルを身につけることは互いに少しずつ育っていくこと
この研究で注目したいのは「離れる道を選んだとしても、自信と準備を少しずつ積み上げていく過程は同じ」だということです。
戻る道でも離れる道でも、最初に必要なのは「選べる状態の自分」を取り戻すことです。
だからこそ、決断そのものは急がずに、回復と準備のほうを先に進めておくことが大事になります。決めるのはその後でも、きっと遅くはないはず。
こうした悩みや、今の生活のペース、職場との関わり方を一緒に整理していきたい方はMental Manageのサービスもご覧ください。
復職か退職か迷っている時に今からできる3つのこと
1. 「辞めたい理由」を体調と職場に分けて書き出す
「朝起きられない、人と話すと疲れる」のような体調の理由
「あの業務量には戻れない、上司との関係がつらい」といった職場の理由
この二つ紙の左右に分けて書き出してみるのはいかがでしょうか。
体調の理由は回復とともに変わっていく可能性があり、職場の理由は調整や相談で変えられる部分があるかもしれません。
分けてみるだけで、何が決め手になっているのかが少し見えやすくなると思います。
2. 主治医や産業医に「今は決めてもいい時期か」を聞いてみる
辞めるか戻るかの判断をするのではなく、主治医や産業医と一緒に「今の自分は、大きなことを決めてもいい状態でしょうか?」と聞いてみるのも一つです。
決める時期について専門家の意見を聞いておくと、焦って決めてしまうことも、ずっと先延ばしにしてしまうことも防ぎやすくなります。
(会社とどう話していくかは【休職中から始める会社との「対話のつくり方」】の記事でもまとめています)
3. 戻る場合と離れる場合の「最初の一歩」を書いておく
例えば
戻る場合:通勤の時間帯に最寄り駅まで行ってみること
離れる場合:どんな働き方なら続けられそうかを3つ書いてみること
どちらの道を選ぶにしても、その最初の一歩はとても小さくて構いません。
両方の一歩を試しておくことで、自分の体がどちらに向いているのかが分かってくることもあります。
(復職に向けた段階的な準備については【段階的な回復でたどる復帰への5つのステップ】の記事も参考にしてみてください)
まとめ|復職か退職かは、選べる自分に戻ってから決めればいいこと
ここまでの内容を、もう一度並べてみます。
「復職は無理」と感じる背景には「体調の影響・休職前の自分との比較・二択だけで考えてしまうこと」があること
「復職して職場に戻る」の中にも、役割や勤務時間等いくつもの形があること
新しい職場を選ぶ道でも「自信と準備を少しずつ積み上げていく過程は同じ」であること
一方で、どちらの道がその人に合っているかは、研究からは分かるわけではなく、その答えは、自分の回復の中で少しずつ見えてくるものなのだと思います。
それでも「どちらを選ぶかより、選べる状態の自分を取り戻すこと」が先であり、迷いながら回復を続けている今の時間は、どちらの道にも繋がっているのだと思っています。
よければ参考にしてみてくださいね。
参考文献
厚生労働省. こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「課長昇進後にうつ病となった技術者の6か月間自宅療養の経過の事例」. https://kokoro.mhlw.go.jp/case/619/
Klerkx, M. L., van Hees, S., Hutting, N., de Rijk, A., & Oomens, S. (2026). Opening new doors: a realist review on return to work with a new employer for sick-listed employees. Disability and Rehabilitation, 1-17. https://doi.org/10.1080/09638288.2026.2660004
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