休職中、上司に何を連絡すればいい?|うまく伝えられない人のための「三人で並べる」対話のつくり方

「上司に連絡した方がいいのは分かっているのですが、何を連絡すればいいのか分からない…」
休職中の方とお話ししていると、この言葉をよく聞きます。
連絡しないでいると見捨てられたと思われていないか気になって、かといって連絡すれば「もう戻れそうですか」と聞かれそうで怖く感じる、どちらを選んでも落ち着かないまま、日だけが過ぎていく感じでしょうか。
今日は2026年に出た2つの研究をもとに、休職中の上司との対話をどう組み立てるかを一緒に見ていけたらと思います。
休職中に会社への連絡が難しいこと
2026年にScandinavian Journal of Primary Health Careという専門誌に、スウェーデンの研究チームによるインタビュー研究が掲載されました。
プライマリケアの現場で三者面談を経験した休職者20名に後から話を聞いた質的研究で、対象は心身の不調で休職していた方たちでした。
ここで浮かび上がってきたのは
休職者たちは、上司に働きかけたいと思っていた
それなのに自分の働く力がどれほど落ちているのかをうまく伝えられずにいた
連絡を避けたかったわけでも関わりを断ちたかったわけでもなく、ただ「伝える」という一点で行き詰まっていた、ということです。
会社側の休職者に対する心理について
2026年にJournal of Occupational Rehabilitationに掲載されたカナダのケベック州とオンタリオ州で、部下の復職に関わった経験のある管理職18名を集め、4回のフォーカスグループを行った質的研究です。
そこで管理職が語っていたのは、休職者に対する復職のやりとりを支える要因と、逆に阻害してしまう要因でした。
復職の支えになる要因:相手への信頼や明確さ、協働具合
阻害してしまう要因:相手への不信、情報の曖昧さや分断
研究者は後者について、調整を損ない復職の成功を危うくすると述べています。
つまりこちらが感じている「うまく話せない」と、上司が抱えている「どう聞けばいいか分からない」は、同じひとつの問題を裏と表から見ている可能性があります。
そう考えると、お互いに伝え方が難しいことではなく、二人だけで話すという形そのものに別の角度から工夫する必要があります。
「二人で話す」ではなく「三人で並べる」
スウェーデンの研究で使われていたのは、DAP(Demand and Ability Protocol:要求と能力のプロトコル)という進め方で、これは本人と上司に加えて、リハビリテーション調整役という第三者が入り、決まった手順で話を進めていきます。
この面談を経験した休職者たちは、それを上司との協働を後押しするものとして受け止めていました。理由は大きく3つに整理されています。
1つめは、職場が求めている要求と、今の自分にできる能力を並べて確認できたことです。仕事の内容について「働けるか、働けないか」ではなく、「この業務は今きつい、この作業なら短時間でできる」という単位で話せるようになります。
2つめは、調整役が具体的な配慮の案まで導いてくれたことです。当事者だけだと「じゃあどうしましょうか?」で止まりがちな話が、第三者がいることで実際の調整案まで進みます。
3つめは、そこで深まった相互理解が、その後の復職過程での継続的な協働につながったことです。研究者たちは結論として、休職の前・最中・後を通して協働を支えることの重要性を挙げています。
こうして見てみると、カナダの研究が挙げた復職の支えになる要因である「相手への信頼や明確さ、協働具合」は、復職初日に急に生まれるものではなく、休んでいる間に少しずつ積み上げたものが、そのまま復職後の関係の土台になるのですね。
ただこの2本の研究はどちらも20名・18名という小さな質的研究で、「これをやれば何割よくなる」という効果を証明したものではなく、対象にはメンタル不調と身体の不調の方が混ざっていますし、国もスウェーデンとカナダで、日本の制度とは前提が違います。
それでも当事者の側と管理職の側の両方から同じ構図が見えてきているという点は参考にする価値があると思っています。
休職中の今から始められる4つのこと
1.「 全部一人で伝えようとしない」と決める
休職中の第一歩として、誰かと協働することから始めてみましょう。
上司との面談を、自分ひとりで乗り切る必要はなく、主治医や産業医、人事部や外部の相談窓口でも、誰か1人でも同席してもらえないかを検討してみてください。
面談の同席をお願いすることは準備のひとつです。
2. 「できるかどうか」ではなく業務ごとに分けて書き出す
ノートを1枚用意して左に今の仕事の内容を箇条書きにし、次にその箇条書きの右に
「今ならできそう」
「短時間ならできそう」
「これは今はきつい」
の3段階を書き込んでみましょう。
「仕事ができるかどうか?」という全体でひとつの答えを出そうとすると答えにくい場合が多いので、答えを3段階分けて伝えてみましょう。
3. 面談が始まる前に「面談の目的」を一文で共有する
面談の前に「今日は復職日を決める場ではなく、今できることを整理する場にしたいです」と送っておきましょう。
この一文を事前にメールで送っておくだけで、曖昧さから生まれる探り合いによる心理的な負担を減らすことができます。
4. 連絡の頻度を、先に決めてしまう
毎回「連絡すべきかどうか」を悩むのが、1番消耗するかと思います。
その場合は「月に1度、メールで近況だけ送ります」のように頻度と手段を決めてしまえば、その間は迷わずに休むことに集中できます。
その都度迷わなくて済むような予定にしておくと楽になることが多いです。
まとめ|対話の土台は休職中につくれること
今回の2本の研究は、どちらも「本人がもっとうまく話すべきだ」と言っているわけではなく、休職者も同じところでつまずいていて、管理職も不信と曖昧さのなかで戸惑っていました。
こうして見てみると足りていないのは技術ではなく、お互いが安心して話せる場の形なのだと思います。
第三者を入れる、要求と能力を並べる、目的を先に決める…そうやってつくった土台は、復職したあとも残ります。
休職して休んでいる時間は止まっている時間ではなく、戻る場所との関係を静かに組み直している時間なのだと、私は思っています。
よければ参考にしてみてくださいね。
参考文献
Pauhlson, M. L., Nyman, T., Svartengren, M., et al. (2026). Employees' experiences of involving their managers in the Return-to-Work process through a three-party meeting in primary healthcare: a retrospective interview study. Scandinavian Journal of Primary Health Care. https://doi.org/10.1080/02813432.2025.2572123
Bertolini, H., Corbière, M., Negrini, A., et al. (2026). Managing Complexity: Manager-Stakeholder Communication, Relational Dynamics, and the Dual Nature of RTW Communication. Journal of Occupational Rehabilitation. https://doi.org/10.1007/s10926-026-10391-x
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