早く復職しなきゃと焦ってしまう?|2つの研究が示した回復と働き続けることを支えていた「場」の共通点

「復職するのは怖い、でも早く元の自分に戻らなきゃ…」休職中にそんなふうに揺れている方も多いのではないでしょうか?
戻ってもついていけない気がして怖いのに、休んでいる間も「これで回復に近づいているのかな…」と不安になってしまう方も多いと思います。怖さと焦りの間で、休むことにさえ上手になれない…という感じでしょうか。
今日は2つの研究をもとに「回復する時・復職して働き続ける時に支えになっていた要素」を一緒に見ていけたらと思います。
回復を支えていたのは「焦らなくていい場所」
2025年、International Journal of Qualitative Studies on Health and Well-beingという健康とウェルビーイングの質的研究の専門誌に、スウェーデンの研究チームによる研究が掲載されました。
ここで見ているのは、ストレス関連の不調で休職した人にとって「何が回復の支えになったか」という点です。対象になったのは、25〜64歳の休職経験者の声を集めた質的研究20本です。
そして分析の結果、回復の支えとして次の3つのテーマが見えてきました。
本物の関心を向けてくれる人がいる・安心できる雰囲気
希望を取り戻した自分を目指していくこと
学びや試行錯誤を通して少しずつ自分が成長していくこと
1つ目のテーマでは、話をちゃんと聴いてもらえること、条件をつけずに受け入れてもらえることが大事だったと語られていました。
そして3つ目のテーマで語られていたのは「何もしない」と「何かする」の間で、いろいろ試してみる時間です。
運動や創作、リラックスする活動などを自分のペースでやってみて、失敗しても大丈夫な形で試せたことが、希望を取り戻すことにつながっていました。
この研究で注目したいのは、回復は行ったり来たりしながら進むもので、そのためには「時間」と「急かさない支援」が必要だと研究チームがまとめていることです。
復職後に働き続けられた職場も似た形をしていたこと
2026年、Nursing Reportsという看護の専門誌に、日本の研究チームによる研究が掲載されました。こちらは本人の内側ではなく、職場の側に何があったのかを見たものです。
精神的な不調を抱える人が長く働き続けられる職場について、2003年から2025年に発表された16本の研究を整理しています。そして分析の結果は、次の5つの環境にまとめられていました。
強みを生かして成長を実感できる職場
一人ひとりの特性を認め、公平に評価してくれる職場
仕事の見通しが立ち、自分の裁量で進められる負担の少ない職場
上司・同僚・家族・地域など、いくつもの支えがある職場
産業医などの専門職と連携して制度を活用できる職場
中には、支援者が病名ではなく「その人の健康な部分」を見つけて関わってくれたことで、希望や自尊心を取り戻せたという声も含まれていました。
また研究チームは、急な変更やあいまいな指示がストレスを高める一方で、役割がはっきりしていて見通しが立つことが、安心して働き続ける土台になると考察しています。
こうして2つを並べてみると、休職中の回復を支えていたものと復職後に働き続けることを支えていた要素はよく似た形をしており、どちらも
「急かされずにいられること」
「自分のままで認めてもらえること」
「少しずつ成長していけること」
が大事な要素になっていました。
休職中にいま受け取っている支援は、ただ休職中だけのものではなく、復職した後に自分に合う場所かどうかを見分ける物差しにもなっていくのかもしれません。
早く戻らなきゃという焦りは、一人で考えているほど大きくなりやすいですよね。「焦らなくていい場所」の一つとして、作業療法士と一緒にいまの状態を整理してみるのはいかがでしょうか。
復職を焦ってしまう時に休職中からできる3つのこと
1. 「急かされない場所」を一つ持っておく
回復の土台になっていたのは、ちゃんと話を聴いてもらえて、条件をつけずありのままでいられる場所でした。それは主治医やカウンセラーとの面談かもしれませんし、家族や友人、同じ経験をした人の集まりかもしれません。
全部の人間関係を頑張らなくても「ここでは焦らなくていい」と思える場所を一つ持っておきましょう。
もし身近な人に話すのが難しければ、通っているクリニックや支援機関で「最近焦りやすい」と一言伝えてみるだけでも構いません。焦っている気持ちごと受け取ってもらえる場所が特に大事になります。
2. 失敗してもいい「小さな試み」を自分のペースで行う
回復は「何もしない」と「何かする」の間を行ったり来たりしながら進んでいくものでした。散歩、絵を描く、湯船につかる…そのくらいの大きさで、少しやってみてはやめてみる、を繰り返してよいのだと思います。
やってみたら疲れてしまった、という日もありますよね。それでも「今日は合わなかった」と分かったこと自体が、自分を知る材料になります。
今日試したことを一言だけメモに残しておくのも一つです。
3. 復職後に必要な「見通し」と「強み」を言葉にしておく
2つ目の研究で見通しが立つことや強みを生かせることが働き続ける支えになっていました。だからこそ休職中のうちに「どんな指示だと動きやすいか、どんな作業なら集中できるか」を書き出してみるのはいかがでしょうか。
例えば「急な予定変更が続くと疲れやすい、細かい確認作業は得意…」そのくらいの具体さで十分です。これが復職面談で、自分に合う働き方を考えてもらうときの材料になります。
書き出すのが難しいときは、1つ目と2つ目で試してきたことを振り返るのもおすすめです。例えば
「この時間帯は動きやすかった」
「この作業は没頭できた」休職中の小さな試しの中に、戻ったあとの強みのヒントが隠れていることも多いと思います。
「この時間帯は動きやすかった」
「この作業は没頭できた」
休職中の小さな試しの中に、戻ったあとの強みのヒントが隠れていることも多いと思います。
まとめ|いま受け取っている支えは、戻ったあとの居場所を選ぶ力にもなること
ここまでの2つの研究が言っていたことを、もう一度並べてみます。
スウェーデンの研究では、本物の関心を向けてくれる人と、焦らず試せる時間が回復を支えていたこと
日本の研究チームのレビューでは、強みを生かせて認めてもらえて、見通しが立ち、いくつもの支えがある職場が働き続けることを支えていたこと
2つの支えは、急かさずその人のままを認め、少しずつ伸びていける場という点でよく似ていたこと
一方で、どちらも複数の研究をまとめ直したもので、それぞれの支えがどのくらいの大きさで効いていたのかまでは分かっていません。日本の職場で同じ形になるかも、これから確かめられていく段階です。
それでも「焦らずにいられる場所は、回復にも働き続けることにも共通する支え」であり、いま受け取っている支えは、この先の自分を守る土台にもなっていくのだと思っています。
誰かに話を聴いてもらえている今の時間も、すでに回復の一部になっているのかもしれません。
よければ参考にしてみてくださいね。
参考文献
Tuvesson, H., Gunnarsson, A. B., Sjösten, M., Carlsson, V., Holmberg, S., Wagman, P., Fagerström, C., & Hörberg, U. (2025). What people with stress-related disorders experience as being supportive for recovery - a systematic review and meta-synthesis of qualitative studies. International Journal of Qualitative Studies on Health and Well-being, 20(1), 2516915. https://doi.org/10.1080/17482631.2025.2516915
Fukuura, Y., Shigematsu, Y., & Mizuochi, Y. (2026). Psychosocial Workplace Environments Enabling Sustainable Employment for People with Mental Health Conditions: A Scoping Review. Nursing Reports, 16(3), 101. https://doi.org/10.3390/nursrep16030101
ブログ一覧へ
