復職後の配慮をお願いするのが申し訳ない?|復職で必要な「減らす調整」と「増やす調整」

「復職のときに何をお願いすればいいのか、よく分からない…」休職中にそう考える方も多いのではないでしょうか?
配慮をお願いすれば戦力にならないと思われそうで、かといって何も言わなければ前と同じ働き方に戻ってしまう…どちらにも進めないまま、復職の日だけが近づいてくる感じでしょうか。
今日は2つの研究をもとに、職場にお願いする調整の中身を一緒に見ていけたらと思います。
必要だと思っていた配慮はどれくらい届いているのか
2026年Journal of Occupational Rehabilitationという職業リハビリテーションの専門誌にドイツの研究チームによる研究が掲載されました。メンタル不調で長期に休職した人を追いかけた2つの調査を合わせて分析したもので、対象は286名と424名です。
復職の前に「どんな配慮が必要か」を尋ねたところ、9割以上の人が何らかの配慮を必要としており、そこで多く挙がってきたのは次の4つでした。
段階的な復職(54〜78%)
業務量を減らすこと(35〜45%)
仕事の進め方そのものの見直し(31〜55%)
上司との定期的な面談(29〜42%)
どれも多くの人が同じように必要としていたことであり、ここまでは想像しやすい内容かもしれません。
ただ実際に復職した後の結果は少し違っていました。
何か1つ以上の配慮を受けられた人は64%
必要だと思っていた配慮がすべて満たされた人は13〜16%
このように配慮が必要だと感じることと、実際に配慮が用意されることの間には、数字的な隔たりがありました。
そして研究チームは、1つでも配慮を受けられた人のほうが、復職後の抑うつ症状が軽く、働く力の実感が高かったと報告しています。
「減らす調整」だけでは続きにくい理由とは?
減らす調整は「負担」にしか効果がないこと
2025年のInternational Archives of Occupational and Environmental Healthという専門誌に、ある研究が掲載されました。産業保健の分野の雑誌で、書いたのはスイスの研究チームです。
ドイツ語圏で働く人を対象に、メンタル不調のある92名と、ない877名を比べた調査で、仕事の負担と、仕事の資源…そして本人の「首尾一貫性」という感覚が、働く状態とどう関わるかを見ています。
ここでいう仕事の資源とは、裁量や上司の支援、フィードバックといった、仕事の中にある支えのことです。
そこで見えてきたのは、次の2つでした。
仕事の負担が主に予測していたのは、燃え尽きの度合いだったこと
仕事の資源と首尾一貫性は、仕事への熱意・働く力と関連していたこと
特に働く力との結びつきは、メンタル不調のある人のほうが強く出ていました。
負担を減らす調整は消耗を防ぐという意味ではたしかに効きますが、それだけでは働く力そのものは戻りにくい、という見え方になります。
サポートになるものが増えていない
減らす調整だけを受けて戻ると、業務の負担は軽くなってもサポートが薄いまま働き始めることになります。それはとても心細い形ですよね。
ただ先ほどのドイツの研究でも、必要な配慮がすべて満たされた人は13〜16%でした。
こうした結果からも「いくつかの配慮は通るとは限らない」という前提で考えたほうが現実に近いのだと思います。だからこそ、どれを先にお願いするかという順番が要ります。
具体的な配慮の整理のしかた
「減らす」と「増やす」を分けて書き出してみる
復職後の業務では「減らしたいこと」だけでなく「増やしたいこと」を決めてみます。その減らしたいことには業務量、担当の範囲、勤務時間、会議の数などが並ぶと思います。
大事なのは増やしたいことです。
週に一度、上司と15分だけ話す時間
困ったときに相談していい相手が決まっていること
自分で進め方を決められる仕事が1つあること
業務で増やしたいことがないと、負担は軽いのに手応えのない状態になりやすくなります。増やしたいことが思いつかないときは、休職の前に働きやすかった日を思い出してみるのも一つです。
お願いする内容を3つまでに絞っておく
お願いしたい配慮が全部が通ることは、研究の数字から見てもあまり多くありません。なので書き出したものに1番から順に番号をつけて、そのうえで上位3つだけを持って話しに行きましょう。
そのうち少なくとも1つは「増やしたいこと」から選んでおきたいところです。段階的な復職は、多くの人が必要とし、実際にも通りやすい配慮です。
また配慮が通りやすいものと、通りにくいけれど大事なものを一緒に並べておくと、話が進みやすくなります。
まとめ|配慮は「お願い」ではなく「設計」
2つの研究が言っていたことを、もう一度並べてみます。
復職前に配慮を必要とした人は9割以上、すべて満たされた人は13〜16%だった
1つでも配慮を受けられた人は、復職後の抑うつが軽く働く力の実感が高かった
働き続ける場面では、負担の重さより仕事のサポートのほうが広く関わっていた
一方で、どの配慮が誰にとって一番効果があるのかは分かっていません。
それでも、減らす調整と増やす調整の両方を用意しておくという考え方は、休職中の今からでも準備できるものだと思います。
配慮をお願いすることは、迷惑をかける行為ではなく、戻ったあとの働き方を設計する作業なのだと思っています。
よければ参考にしてみてくださいね。
参考文献
Sikora, A., Seufert, L., Starke, F., et al. (2026). Needed and Received Work Accommodations During Return to Work Among Employees with Common Mental Disorders and Relationships with Depressive Symptoms and Work Ability. Journal of Occupational Rehabilitation. https://doi.org/10.1007/s10926-026-10427-2
Lehmann, A. I. & Bauer, G. F. (2025). Occupational health of employees with mental health issues: the role of the psychosocial working conditions and sense of coherence. International Archives of Occupational and Environmental Health, 98(7), 573-585. https://doi.org/10.1007/s00420-025-02154-7
ブログ一覧へ
