休職中の今、何をしていいか分からない?|2年後まで効いてくる「伴走」と「考えごとの整理」

「休んでいる間、何をしていたらいいのか分からない…」休職中にそう感じている方も多いのではないでしょうか?
焦って動けばまた潰れてしまいそうだし、かといって何もしないでいると時間だけが過ぎていく…どちらにも進めないまま、日付だけが変わっていく方も多いと思います。
今日は2つの研究をもとに「休職している今の過ごし方が復職後にどう繋がっていくのか」を一緒に見ていけたらと思います。
休職中の「伴走」は2年後まで残っていた
2026年Journal of Patient-Reported Outcomesという患者報告アウトカムの専門誌に、スウェーデンの研究チームによる報告が掲載されました。
PROMISEという無作為化比較試験の2年ぶんのデータを、改善の辿り方ごとにグループ分けする手法と、費用の分析を組み合わせて読み直したもので、対象になったのはうつや不安・ストレス関連の不調で休職している人たちです。
介入は通常のケアに加えてWEBと電話を使った遠隔ツールを使い、自分の状況を自分の言葉で語り、そこから「目標を一緒に決めて共有していく、その人中心のケア」を上乗せするという内容でした。
2年後に見えてきたのは、次のようなことでした。
介入を受けたグループは、プライマリケア・処方薬の費用、生産性の損失の合計額と平均額が、対照グループより軽減していた
改善の辿り方で「大きく改善」「中程度」「わずか」「改善なし」の4グループに分かれた
最も大きく改善したグループは、53%が介入を受けた人たちだった
そのグループは、自己効力感・生活の質・ストレスの全てで改善幅が大きく、平均費用も最も低かった
2年というのは、休職から復職してからしばらく働いた後まで含まれる長さであり、以上のことから「休職中に受けた関わりがそのくらい先の負担の軽減にまで繋がっていた」という傾向が示唆されています。
ただこの研究にはもう一つ、正直に見ておきたい結果があります。4グループのどれに入るかについては、介入を受けたかどうかで統計的な差はつかなかったのです。
つまり「支援を受けたから必ず大きく改善する」とまでは言えておらず、実際最も改善しなかったグループは、最初の時点での健康状態が重く、学歴や主な診断名にも違いがあり、効き方にはかなりの個人差があったと考えられます。
ここから考えられるのは、伴走してもらうこと自体が有効なのではなく「その関わりのなかで何が動いたかのほうが意味があるのではないか」ということだと考えます。
「考えごとのループそのもの」を客観的に捉える
2025年Frontiers in Psychiatryという精神医学の専門誌に、ノルウェーの研究チームによる報告が掲載されました。
専門的な精神科サービスのなかで、うつ病の患者20名が4つのグループに分かれ、2名の治療者による集団メタ認知療法を全10セッション受けた研究で、診断の評価は治療に関わっていない独立した評価者が治療の前後に行っています。
ここで「メタ認知療法」というのは、考えている内容そのものを修正するのではなく「考え事が止まらない状態」のほうに働きかけていく方法で、落ち込んでいる内容より、繰り返し落ち込みや心配といった心理状態が長く続いてしまう仕組みを扱っていきます。
報告された結果は、次のようなものでした。
うつ病からの回復率は80%だった
復職を含む主要・副次のアウトカムで効果が見られた
改善は6か月後・12か月後のフォローアップまで概ね保たれていた
医療経済の評価でも費用対効果は良好と示された
そして研究チームは、この形の集団メタ認知療法はうつ病を費用対効果よく治療したい専門的な精神科サービスに適しているのではないか、と報告しています。
ただこの研究は対照群を置かないオープン試験で対象は20名と小さく、単一の施設で行われたもので、フォローアップの期間中にうつ症状が臨床的に意味のある程度まで悪くなった患者も一部いたことが報告されています。
休職中の今から整えておきたい3つのこと
1. 自分の言葉で、行き先を一度置いてみる
PROMISEでの介入は「自分の状況を自分の言葉で語り、そこから目標を決めて共有していく」という関わりでした。ここで言う目標は、復職日のような大きなものでなくてもいいのだと思います。
「午前中に一度は外に出ている状態」
「1日1回1時間は読書をしている状態」
「週に2回は人と話している状態」
これくらいの大きさで書いて誰かに見せておく、これだけでも支援を受ける側から一緒に決める側に立ち位置が変わっていけると思います。
2. 考えごとの「中身」ではなく「長さ」を見る
メタ認知療法が扱っていたのは、考えている内容ではなく「考えごとが続いてしまう」仕組みのほうでした。
ご自身でできる範囲としては、「今日はあの件を何分くらい考えていたか」をざっくり記録して見返せるようにしてきましょう。
この時、内容の正しさを判定しようとするとかえって思い悩むことも多いと思います。なので長さだけを見る、というのも一つです。
その上でさらに思考が止まらないようであれば、主治医にその困りごととして相談してみるのもよいと感じています。
まとめ|休んでいる時間は空白ではないこと
2つの研究が言っていたことを、もう一度並べてみます。
休職中に、自分の言葉で目標を決めて共有する遠隔の伴走を受けた人たちは、2年後の医療費や生産性の損失が低かった
最も大きく改善したグループの53%が、その伴走を受けた人たちだった
「考えごとが続いてしまう」仕組みに働きかける集団メタ認知療法では、80%がうつ病から回復し復職にも大きな効果が見られた
一方で、どの人にどの関わりが1番効果的か、そして日本の休職・復職の制度のなかで同じ結果が出るのかどうかは、まだ分かっていません。
それでも
「行き先を自分の言葉で置いておくこと」
「経過を全体的に知ってくれる伴走者を1人作っておくこと」
これらは休職中の今からでも準備できるものだと思います。
休んでいる時間は何も進んでいない空白の時間ではなく「次に働き続けるための土台を置き直している時間」なのだと思っています。
よければ参考にしてみてくださいね。
参考文献
Harvey, B. P., Kebede, T. T., Fors, A., et al. (2026). Group-based trajectory modelling of multiple health outcomes in a cost-consequence framework: a randomized controlled trial of a remote person-centred care intervention for people with common mental disorders in Sweden. Journal of Patient-Reported Outcomes, 10(1), 54. https://doi.org/10.1186/s41687-026-01043-y
Nordahl, H., Pukstad, E., Hjemdal, O., et al. (2025). Generic group metacognitive therapy for depression in specialized mental health care: an open trial with 6- and 12-month follow-ups. Frontiers in Psychiatry, 16, 1704076. https://doi.org/10.3389/fpsyt.2025.1704076
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