「まだ相談する段階じゃない」と感じる…|2つの研究が示す復職相談のタイミングと「戻れそう」の育ち方

「まだ人に相談するような段階じゃない気がする…」休職中にそう感じる方も多いのではないでしょうか?
もう少し眠れるようになってから…もう少し外に出られるようになってから…そう思っているうちに、日にちだけが過ぎていくことに不安を感じる方も多いのではないかと思います。
今日は2つの研究をもとに、復職に向けた相談をいつ始めるのかという話を一緒に見ていけたらと思います。
相談を始めた時期でそのあとは変わるのか?
2025年、Journal of Occupational Rehabilitationという専門誌に、ある研究が掲載されました。職業リハビリテーション分野での雑誌のオランダの研究チームで、心の不調で休職した人12,169名の記録をもとにした観察研究になります。
オランダでは、休職から2週間以内に産業医との復職相談を始めることが決まりとして定められています。
研究チームは、その決まりどおりに復職相談を始めた人と、それより遅かった人を比べ、併せて1週目から6週目までのあいだで、週ごとにどんな違いがあるのかも見ています。
そこで挙がってきたのは、次の3つでした。
相談を早く始めた人のほうが、復職までの期間が短い傾向が見られた
ただし差が明確になっていたのは、ごく早い時期に相談できた人だけだった
2週目から5週目の間では、相談の時期による差は見られなかった
注目したいのは後半の2つで、復職には早く相談を始めるほうが良い傾向ではあるものの「1日でも遅れたら手遅れになるという話ではないこと」です。
これは相談が意味を持たないという話ではなく、期限に追われる必要はないという意味なのだと思っています。(ただ観察研究なので、早く相談したから戻れたという因果までは示せていません)
「もう少し良くなってから」が続きにくい理由とは?
症状の回復と復職の見通しの回復は速さが違う
2025年のDie Rehabilitationというドイツのリハビリテーションの専門誌に、もう1本の研究が掲載されました。心身症のリハビリ施設に入院した180名を、そのあと12か月まで追いかけたものです。
「復職できそうという感覚」と「うつ症状」の変化をそれぞれ別の尺度で測っており、そこで挙がってきたのは、次の2つでした。
「復職できそうという感覚」が高い人ほど、実際に復職する可能性が高かった
治療の前後で「うつ症状」は大きく変わった一方で「復職できそうという感覚」の変化は小さかった
要するに症状がよくなれば復職の見通しも一緒に戻ってくる、という順番ではない傾向があります。
ただこの研究は入院リハビリを受けた180名の調査なので、休職中の方すべてに当てはまるとは限りません。
それでも体調が整うのを待っている間は、復職の見通しが置いていかれやすく、だとすると「良くなってから相談する」という段取りは、少し噛み合いにくいのだと思います。
一人で考えている間は判断材料が増えない
休職中は、判断材料になる情報が自分のところに入ってきにくくなります。
会社の制度も主治医の見立ても、聞いてみないと分からないことが多く、材料が増えないまま考え続けると、不安がぐるぐる回りやすくなりますよね。
中には復職の日程が決まってしまうのが怖くて、相談する日程を先に延ばしたくなる気持ちもある方もいらっしゃるかと思います。
ただ相談を早めに始めることの意味は、答えをもらうことよりも、復職の判断材料が増えることなのだと思っています。
具体的な復職相談の始め方のこと
「相談していいか?」から相談してみる
最初からいきなり復職そのものの話をしなくても大丈夫。「今はまだ何も決められないのですが、話を聞いてもらえますか」から始めてみるのはいかがでしょうか。
口に出しにくければ、その一文をそのまま紙やメールに書いて渡す形でも、次に何を確かめればよいかが少し見えてくることがあります。
実際の支援の場でも、決めない前提で来た方のほうが話しやすそうにされていることが多いように思います。
「決めること」と「確かめること」を分けておく
「復職日を決めること」と「制度や手続きを確かめること」はまったく別のものだと思います。
確かめるほうから先に動いておくと、あとで決める場面での負担が軽くなります。例えば、使える休職期間、復職までの手続き、産業医面談の有無…確かめられることは意外と多いように思います。
2本目の研究が示していたのは、復職の見通しは待っていても育ちにくいということでしたが、自分が確かめた事実がひとつ増えるたびに、復職の見通しの輪郭も少しずつはっきりしてくるのだと思います。
まとめ|復職の相談は整ってから行く場所ではない
今日見てきた2つの研究が言っていたことを、もう一度並べてみます。
復職相談を早く始めた人のほうが、復職までの期間は短い傾向があった
ただし数週間の遅れで大きな差がつく、というほどのものではなかった
「復職できそうという感覚」は復職と関わっていたが、症状ほどには変わりにくかった
一方で、どちらの研究も日本の職場を対象にしたものではなく、制度も休職の進み方も違うので、そのまま当てはめられるものではなく、早く相談したから戻れたと言い切れるものでもありません。
それでも、復職相談は体調が整ってから行く場所ではなく、整えるために使える場所なのだと思います。2つの研究を並べて見えてくる大事なことは動き出す時期よりも「相談を待ちすぎないこと」のほうかもしれません。
まだ何も決められないという状態のまま行くことも準備不足ではなく、それが復職への最初の第一歩なのだと思っています。
よければ参考にしてみてくださいね。
参考文献
van Rossum, T. B., Kok, R. N. & Nieuwenhuijsen, K. (2025). Timing Return-to-Work Counseling: An Observational Study Into the Effect of Time to First Consultation on Return to Work. Journal of Occupational Rehabilitation. https://doi.org/10.1007/s10926-025-10334-y
Lidolt, G., Beller, J., Hansmann, M., et al. (2025). Die prädiktive Rolle von Selbstwirksamkeitserwartung für die Wiedereingliederung nach stationärer psychosomatischer Rehabilitation bei Erwerbstätigen mit psychischen Störungen. Die Rehabilitation, 64(5), 291-297. https://doi.org/10.1055/a-2654-4661
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