復職のとき、どこまで話せばいい?|2つの研究が示した「打ち明けたあと」を左右していたもの

「復職のとき、自分の状態をどこまで話せばいいのか分からない…」休職中にそう迷っている方も多いのではないでしょうか?
全部伝えれば気を遣わせてしまいそう、かといって伝えなければ前と同じ量の仕事が回ってきそうで不安…といったように言葉が決まらなくなる方も多いと思います。
今日は2つの研究をもとに「職場で打ち明けたあとに何が起きていたのか」を一緒に見ていけたらと思います。
71件の研究が集めた「打ち明けたあとに起きたこと」
2026年Journal of Occupational Rehabilitationという職業リハビリテーションの専門誌に、カナダの研究チームによる報告が掲載されました。ここでいう「打ち明ける」というのは、職場の誰かに自分の不調を伝えて、そのうえで必要な配慮の話に進んでいくことを指しています。
2000年3月から2025年2月までに発表された研究を集めて、打ち明けたあとに何が起きたのかを整理したもので、当事者・管理職・組織のいずれかの視点を含む71件の研究が対象になっています。
そして研究チームが良い方向の変化として挙げたのは、次のようなことでした。
職場からの必要な配慮を受け取れるようになったこと
自分の状況を代わりに伝えてくれる動きが生まれたこと
自分自身の見え方が良いほうに変わったこと
職場の人との関係が前より良くなったこと
ただ研究チームは、そうではない方向の報告も同時に挙げています。
伝えたのに必要なものが届かなかったこと
支援そのものを断られたこと
打ち明けたことを後悔する気持ち
同僚や管理職からの否定的な扱い
ここで否定的な扱いは、職業のイメージが強く固まっている職場で特に報告されていて、例として法を執行する現場が挙げられています。
つまり「同じように不調を打ち明けても置かれている場所によって返ってくるものが違っていた」ということだと思います。
注目したいのは、良い方向として挙がっていた中身がどれも「自分の不調を打ち明けた後に周りがどう動いたか」だったことです。
上司の受け止め方と結びついていたもの
2025年の同じJournal of Occupational Rehabilitationに、今度はオーストラリアの研究チームによる調査が掲載されました。
オーストラリアで働く322名を対象にした調査で、上司に自分の不調を打ち明けたときの経験を自由記述で書いてもらい、その内容を肯定的なものと否定的なものに分けた上で、働く力の自己評価などとの関係を分析しています。
そして分析の結果は、次のようなものでした。
肯定的な経験のほうが、否定的な経験よりも多く報告されていたこと
肯定的で多かったのは、心配を言葉にしてくれた・最後まで聞いてくれた・気持ちを汲んでくれたという受け止め方など
否定的で多かったのは、決めつけるような言い方や見下すような物言いなど
肯定的な経験をした人ほど働く力の自己評価が高く、その職場に残りたい気持ちが強く職場での偏見を感じにくかったこと
ここでいう働く力の自己評価というのは「今の自分が職場の要求にどのくらい応えられそうか」を本人が答えていくものです。
こうして二つの研究結果を並べると、不調を打ち明けることはそれ自体で結果が決まる行為ではなく「受け取る相手との間で何が起きるか」ということなのだと思います。
そう考えると話す中身を完璧にすることより「誰にどう話すかを整えておくこと」のほうが、いまの自分から手が届きやすいのではないでしょうか。
復職の前に準備しておける3つのこと
1. 診断名ではなく「困りごと」の形で用意する
上司に届きやすいのは病名そのものより「仕事のどの場面で何が起きるのか」のほうだと思います。なので例えば「長い会議のあとは集中力が戻りにくい…」そのくらいの大きさで、言葉にしておきましょう。
「自分の困りごと」の方から用意しておくと、話す相手が上司から産業医に変わっても、その言葉が使えます。
「自分の困りごと」は多く並べすぎると、受け取る側は何から手をつければいいのかが分からなくなってしまうので、書き出す場面は3つくらいに絞っておくと届きやすいと思います。
2. 最初に話す相手を成り行きに任せない
2本目の研究結果では、最初に受け止めた人の反応がその後の自己肯定感と結びついていたことでした。だとすると「誰に最初に話すかは」決めておきたいところです。
直属の上司に話しにくさがあるなら、産業医や人事、社外の相談先から先に伝えるという順番もあります。自分の不調を話す順番を自分で選んでおくのも一つです。
先に誰かへ一度話しておくと、その場で言葉が整理されて、次に話すときには落ち着いて伝えられることも多いように思います。
3. 話した後に「お願いしたいこと」まで一緒に用意する
不調を打ち明けるのと同時に、必要な配慮をお願いすると受け取る側も動きやすくなります。
例えば「最初の1か月は残業なしでお願いしたい…」一つで構わないので、具体的な形にして添えてみるのはいかがでしょうか。
この時、配慮はいつまでという区切りも添えておけると話が進みやすいと思います。配慮する期間が見えていると受け取る側も身構えずに済みます。
まとめ|打ち明けることは配慮を受け取るための入り口
ここまでの2つの研究が言っていたことを、もう一度並べてみます。
71件の研究では、打ち明けたあとに配慮が届き、職場の関係や自分自身の見え方が良くなったという報告があったこと
同時に必要なものが届かなかった・否定的に扱われたという報告もあったこと
322名の調査では肯定的な受け止め方のほうが多く、そうした経験をした人ほど働く力の自己評価や職場に残りたい気持ちが高かったこと
一方で、どちらの研究も日本の職場を対象にしたものではなく、どんな伝え方をすれば良い受け止めにつながるのかまでは分かっていません。
それでも「打ち明けることは、配慮を受け取るための入り口」であり、いま準備しているその一言は「復職したの働きやすさ」に繋がっていくものなのだと思っています。
もし返ってきた反応が冷たいものだったとしても、それは伝えた側の落ち度ではなく、受け取る側に委ねられていた部分なのだと思います。
よければ参考にしてみてくださいね。
参考文献
Richard, C., Corbière, M., Fiset-Renaud, H., et al. (2026). Disclosure Impact of Mental Health Conditions in the Workplace: A Scoping Review and a Thematic Analysis. Journal of Occupational Rehabilitation, 36(1), 131-166. https://doi.org/10.1007/s10926-025-10288-1
Volkov, I., Sheppard, D. M., Kirk-Brown, A., & Van Dijk, P. (2025). Workplace Outcomes After Mental Health Disclosure: The Critical Influence of Supervisor Reactions. Journal of Occupational Rehabilitation. https://doi.org/10.1007/s10926-025-10352-w
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