支援を受けているのに良くならない…|2つの研究が示した「支援の量」より大事だったこと

「周りに支えてもらうばかりで、申し訳ない…」休職中にそう感じている方も多いのではないでしょうか?
上司にも家族にも手間をかけていて、それなのに自分は何も返せていない…受け取ることのほうが苦しくなってくる方も多いと思います。
今日は2つの研究をもとに「休職中に受けた支援が、その後どこまで残っていくのか」を一緒に見ていけたらと思います。
休職した人と上司が語った「守りになっていたもの」
2025年Journal of Occupational Rehabilitationという職業リハビリテーションの専門誌に、オーストラリアの研究チームによる報告が掲載されました。
仕事が原因の心理的な不調で2週間以上の休職を勧められた従業員と、そうした部下を持つ管理職に話を聞いた研究で、参加したのは55名・平均年齢は44歳、8割が女性でそのうち12名には、オンラインでさらに詳しい面接が行われています。
数値を測る研究ではなく、語られた言葉から共通するものを取り出していく形の研究で、そのうち回復を妨げるものとして挙がったのは次のようなことでした。
不調のもとになった働き方がそのまま残っていること
不調を打ち明けたときに否定的な反応が返ってきた経験
ケアや復職に手続きが多くて辿りつきにくいこと
ただ研究チームは、逆に回復を促すものになっていたものも挙げています。
状況を分かったうえで支えてくれる管理職の存在
その人の強みをもとにして仕事の形を調整してもらえること
強みをもとにした調整というのは「その人がもともと得意だったところに合わせて仕事の形を変えていく」という考え方です。
そして当事者と管理職の両方が必要なものとして挙げられたことの中には「継続的な支え」と「本人の側に立って声を届けてくれる存在」がありました。
支援を復職後まで続けた人たちの2年後
2025年Die Rehabilitationというリハビリテーションの専門誌にドイツの研究チームによる研究が掲載されました。
ドイツの年金保険が持つ日常業務のデータを使い、1464名分の記録を分析したもので、職業リハビリテーションを終えた後に、JobProtectionという取り組みで最長24ヶ月のアフターケアを続けるという内容でした。
比べられたのは、次の3つのグループでした。
アフターケアを受けた介入群 113名
過去に通常のアフターケアを受けた対照群 688名
同じ時期に通常の支援を受けた対照群 663名
この中で研究チームは、アフターケアを受けた介入群でこの2年間の就労継続に至る可能性が有意に高かったと報告しています。
ただこの研究は無作為化された試験ではなく、アフターケアを受けた人は113名と多くありません。ドイツの年金制度のもとで行われた職業リハビリテーションが土台なので、日本の休職・復職とそのまま同じとは言えないところもあります。
それでも注目したいのは、その支援が復職の後まで続いていたことであり、復職後も同じ相手が関わり続けていました。
急いで支援を終わらせることよりも「必要な支援の長さを確保することのほうが大事だと示唆できる」という見え方だと思います。
休職中の今からできる3つのこと
1. 「できなくなったこと」より「残っている強み」を書き出す
復職の相談は配慮してほしいことの話から始まりやすいと思います。その中でいま自分に残っている得意なことを一つ添えてみるのはいかがでしょうか。
例えば「人前は苦手になったけれど、下調べは前より丁寧にできる」…そのくらいの大きさを伝えてみる準備をしておきましょう。
2. 相談先をたった一人に決めない
当事者と管理職が挙げていたのは「継続的な支え」と「声を届けてくれる人の存在」でした。ただそれを誰か一人に背負ってもらうと、その人が異動したときに支援が途切れてしまいます。
上司の他にも主治医や産業医、家族や同僚、社外の相談先…相談先をいくつか持っておけると安心だと思います。
3. 支えの「復職後」を、いまのうちに話しておく
今繋がっている支援が、復職した後も続けて支援を受けられるのかを確かめておきましょう。
自分の支援者と「復職後も月に一度は話せる」と決まっているだけでも、ずいぶん楽になってくるのではないでしょうか。
今より先に相談できる予定が入っていることは、それだけで心の支えとなる側面を持っているのだと思っています。
まとめ|支援を受け取ることはこの先も意味があること
ここまでの2つの研究が言っていたことを、もう一度並べてみます。
回復を促していたのは「管理職の支え」と「強みをもとにした仕事の調整」
当事者が必要だと挙げたものの中に「継続的な支え」と「本人の側に立って声を届ける存在」があった
職業リハビリテーションの後に最長24か月のアフターケアを続けた人は、2年以上の就労継続に至る可能性が高かった
一方で、1本目は55名の語りをまとめた研究なので、どの支援がどれだけ効果があるのかという量の話までは分かっていません。
それでも「支援を受け取っている時間は空白ではないこと」であり、長く支援を受け取ることは「働き続けるための土台を作っている時期」なのだと思っています。
よければ参考にしてみてくださいね。
参考文献
Sanatkar, S., Lipscomb, R., Bower, M., et al. (2025). Social Determinants of Recovery from Work-Related Psychological Injury After Sick Leave Absence: Examining Employee and Manager Perspectives. Journal of Occupational Rehabilitation. https://doi.org/10.1007/s10926-025-10353-9
Andreeva, E., Levin, T., & Sturm, C. (2025). Nachhaltige Reintegration ins Erwerbsleben bei psychischen Erkrankungen: Effekte der JobProtection-Nachsorge. Die Rehabilitation, 65(4), 225-233. https://doi.org/10.1055/a-2654-6017
ブログ一覧へ
